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よこはまSDGs②「かながわ デュアルシステム」


県立高校の単位を実務で取得
高校の学びと社会とのギャップを埋める革新的な教育制度 

本年初夏から秋にかけ、とある高校生が横浜市内の企業にて、大豆ミートを使用した3つの商品開発を行った。世界の食料事情や農業の推移および環境問題を意識したそれらの商品は、キッチンカーで実践販売され、いずれも好評の内に完売。その実績は在籍している高校内に留まらず、地元企業やメディアからも注目を集めている。神奈川県立商工高校(保土ヶ谷区)総合ビジネス科3年の佐藤星斗(さとう・せいと)さんが開発した、丼スタイルのテイクアウト商品だ。

佐藤さんは、高校の授業の単位を協力企業での実務で取得する「デュアルシステム」を選択し、高校最後の一年間を研究学習に注ぎ込む。

今回は、昨今注目されているデュアルシステムの現状と、活用した高校や生徒、協力企業がもたらす新たな未来ついて取材した。

商工高校文化祭での実践販売の様子

高校生が、企業で経営者や社員とディスカッション。
自主性が鍛えられる学び舎

横浜市西区に横浜フードラボを構える東京牧場(株)は、全国各地の自社農園の運営から、そこで収穫した食材を使用したレストラン経営と商品開発など、農作から販売まで一連の事業を展開する。この西区の社屋には、経営陣や社員、アルバイトスタッフにまじり、現役高校生数名が月曜から金曜まで毎朝「出社」する。彼らこそが、今回の主役である、デュアルシステムを採用した専門高校へ通う生徒たちだ。

神奈川県立高校には、商・工・農・海洋などの分野に特化した専門高校があるが、この企業が受け入れを行っているのは、三浦初声高校(農業)と、佐藤さんの通う商工高校の2校。関連部門への配置のみに留まらず、経営陣や社員が高校生たちの意見や希望を聞き、それぞれの研究テーマについて、しっかりと向き合ってプロジェクトを進めていく。

佐藤さんが東京牧場と行った研究と商品開発を例に、商工高校総合ビジネス科が採用している研究学習の流れを紹介する。

①春、いくつかの受け入れ企業への訪問・見学をし、自身の希望を高校へ提出。出向先が決定する。

②企業にて研究テーマを設定する。この時、高校生が経営者や社員と実際にディスカッションする場が設けられ、テーマに沿った研究計画と実験方法(佐藤さんの場合は商品開発と実践販売)について共に詰めていく。

③受け入れ企業の関連事業者(今回はキッチンカー運営事業主や食品卸売業者など)を交え、商品開発。この時、企業内外の様々な分野の社会人に提案や折衝などをし、ビジネススキルを体得していく。

④販売商品および出店の日時場所を決定後、店頭ポスターなどの販売促進ツールの準備をする。2回目の販売実験分までは社内のデザイナーと共に作成し、3回目は、佐藤さんが一から作成。制作物の進行管理やディレクションも経験する。

⑤開発商品販売当日。店舗設営をキッチンカー事業者へ託し、店頭で接客。購入者へアンケートの記入を打診するなど、自身の開発商品の反応を記録し、後の効果検証の材料とする。

⑥企画から実践販売を経て得られた材料をもとに、神奈川県生徒商業研究会など公の場で研究を発表する。高校の教諭や受け入れ企業の社員らのサポートを受けながら、資料作りから演説までをこなしていく。          

以上が半年間の軌跡。非常に内容の濃い実務を、一高校生が社会人と切磋琢磨しながら乗り越えていく様には、ある種の感動を覚える人も多いのではないだろうか。
 
この実務を通した研究学習の経験こそ、その後の就職活動や進学に対する意識を高め、就職後の学業と実務のギャップを緩やかにし、将来的には離職率を下げる取り組みとして有効であるとのこと。デュアルシステムが、若年層の持続可能な就労を実現するための、とても大きな一歩であることは間違いないだろう。

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ココハマ.創刊号 よこはまSDGs①「企業での“実務”が高校の単位に。神奈川県立高校での日本初の試みとは?」

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