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イベント&施設レポート「フォーラム」


みなさまこんにちは。ココハマ.編集長の駒込です!

最近、新聞やTV、webなどで「ジェンダー平等」「ルッキズム」「性的同意」「フェムテック/フェムケア」などなど…ジェンダーやからだに関するこれらの言葉を見聞きする機会、増えてきましたね。
でも正直、一つ一つ深くは理解していないし、そのことを周りの人にも言いづらい…そんなモヤモヤした思いをしている方も少なくないのでは。

かく言う私もその一人。最近、年下の方と接するとき「自分がした何気ない会話で、相手に不快な思いをさせていないか?」と、笑顔の裏で相当ヒヤヒヤしています。

そもそもジェンダーやからだの理解・教育を進めることって、誰もが少しずつ”息苦しさ”から自由になれることが目標だったような。が、しかし…昭和、平成と今の感覚と異なるジェンダーや性への価値観の中を必死に生きてきた私たちが、少し”息苦しさ”を感じているのも事実。

今回は、私のように「今すぐ自分が変わらなきゃいけないのかな?」とモヤモヤ・ヒヤヒヤされている方必見!さまざまな生き方に寄り添ってくれる、横浜の公共施設ご紹介します。

多様な生き方のサポートをしてくれる、横浜・戸塚の公共施設「フォーラム」

戸塚駅からJRの線路沿いをのんびり歩いて5分ほどのところに、公共施設「男女共同参画センター横浜」があります。
こちらは「フォーラム(集会所)」という覚えやすい愛称もあり、横浜市民や在勤・在学の方がいつでも訪れることができる場所。年齢・性別を問わず多様な『生き方のサポート』をしています。

2/18(日)にこちらの施設で、3月8日の国際女性デーにちなんだトークイベント「~自分軸で考えよう~ Z世代・ジェンダーとからだの話」が開催されました。
タイトル通りZ世代(2024年現在13歳~29歳前後の年齢層)の“いま”の感覚を知ることができる興味深い講演です。

冒頭でも述べた私のヒヤヒヤポイントの一つである
「自分の発言で相手に不快な思いをさせていないだろうか?」
こちらを解消するお話が聞けるかも!そんな淡い期待を胸にフォーラムへお邪魔しました。

Z世代の本音を聞ける貴重なトークイベント

フォーラム1Fのホールでスタートしたトークイベント「~自分軸で考えよう~ Z世代・ジェンダーとからだの話」。

2部構成の第1部には、Z世代を代表するゲストとして、報道番組のコメンテーターとしても活躍されているモデル・タレントの藤井サチさん(1997年生まれ・27歳)が登壇。さらに、美容の分野を中心に執筆されているライターの長田杏奈さんをインタビュアーに迎え、SNSやメディアでご自身の視点で発信を続ける藤井さんの言葉から、ジェンダーやからだに関する飾らない“いま”を知ることができました。

10代のころから国内でファッションモデルとして活躍してきた藤井さん。活動を始めた2010年代、ティーン向け雑誌の業界ではまだまだ「細身のモデル」が当たり前のころ。アメリカ人の母を持つ藤井さんは他のモデルに比べ体型がしっかりしていたため、体重を落とし、業界の求める細い体型を常に意識していたそうです。
そんな彼女のからだとメンタルに異変が。繰り返し過剰なダイエットをしたストレスから「摂食障害」を発症します。
10代で経験したこの病気の治療をきっかけに、藤井さんは27歳の今もなお『ルッキズム』と『自分らしさ』について深く向き合い続けています。

左から藤井サチさん、長田杏奈さん。藤井さんは3月の国際女性デーにちなみ、ミモザの花があしらわれたワンピースで登壇

藤井さんの言葉で一番印象的だったのはこちら。

「自分と違う世代の家族やお仕事でお話しさせていただく方が、他者の見た目についての批評や過去のジェンダー観のままのお話をしていたら、わたしは笑顔で『それ、ルッキズムですよ~!』『その発言は(傷つく方もいるから)なさらないほうが良いですよ~!』って伝えてますよ。」

1980年代生まれの私、正直『なんて大胆な言動!』と驚いてしまいました。

10代・20代の頃の自分が彼女の立場だったら、苦笑いでやり過ごしてしまうかもしれない。いや、40代の今でさえ同じ行動をしてしまうかもしれない。

でも、それでは相手の方の感覚は変わらず、他の誰かに同じ発言を繰り返して不快にさせてしまうかもしれない。その結果、またその方が周りの人から悪い印象になるループのまま…。

彼女の笑顔と言葉にあるのは、相手への愛情とその先にいる「誰かの未来」への気遣い。自分にまだ無い考えにハッとさせられました。

藤井さんの素直な思いをたくさん引き出したインタビュアーの長田さんは、私と同じ40代。藤井さんの言葉に共に驚き、関心し、頷く。世代を超えて笑顔で理解し合うという機会を共有できたこと、これが第1部の大きな収穫でした。

トークイベントに同行した自身の長男(小2)。この日のお話を胸に「自分自身と周りの人を大切にすること」を保護者として伝えたい

同イベントの第2部は、横浜が誇る伝統校・フェリス女学院大学の研究機関「ジェンダースタディーズセンター」の学生による発表会。このセンターは「新しい時代を切り拓く女性 」 を育成するための学内機関で、学生自身が自らの生き方を考え、自立した女性として社会に参画できるようなジェンダー教育・研究・キャリア支援の3つを軸に、2023年春に設立されたそう。
センターで活動される学生さんと共に登壇したのは、婦人科医の小野寺真奈美先生。横浜・元町の「女性医療クリニックLUNA」にて様々な患者さんの思いに向き合っています。
現役大学生と女性医療の医師、それぞれの立場からジェンダーとからだの“いま”を知ることができました。

フェリス女学院大学・ジェンダースタディーズセンター(Gem)で活動される学生の皆さん

約1年間、ジェンダー教育を専門とする国内トップレベルの教員監修のもと、主体的に学ばれた学生の皆さん。センターの取り組みの一つとして、毎週、ジェンダーやからだに関することを誰もが気軽に語れる「ジェンダーカフェ」を開催されたそう。
ここでは、恋人との仲が深まると誰もが目の当たりにする性的同意の有無や、生理との向き合い方、最新のフェムテックに触れること、プライベートゾーンについての疑問や不安など、大人の女性として歩み始めた彼女たちの等身大の悩みや話題を積極的に共有・調査研究している点が大変興味深かったです。

学生たちの発表を受けて、2部の後半は婦人科医の小野寺真奈美先生が学生たちからの質問に答える形で講話。
ルッキズムに関わるSNSでの偏った情報に対しての向き合い方等、学生たちの身近な問題から、男女問わず月経に対する知識の乏しさ・理解度の低さから、災害時に避難所で生理用品を配布する際に問題が生じている現実など、現在進行形で起きている問題を知ることができました。

写真左が小野寺医師。学生からの等身大の質問に婦人科医の立場から真摯に回答

小野寺先生のお話で、一児の母である私が気になったのはこちら。

「現在の小学校、中学校での授業としての性教育はまだまだ不十分。そのためPTAから依頼を受けて、私が性教育の特別講義を児童や生徒に行うこともあります。」

ここで言う不十分とは、月経や生物としての受精の仕組み・性感染症のリスクは義務教育で行なっているが、性交渉や性的同意についての具体的な指導や教育は十分に進んでいない、ということ。
保護者としては、ここを一番、学校で冷静にかつ真面目な雰囲気でやっておいてほしいのですが…(泣)
教育現場の“いま”を知り、保護者として子どもの成長に合わせて伝えること・考えることをしっかりしよう!と、決意しました。

イベント終了後、フォーラムの建物と敷地内を探索。

お天気も上々なこの日、芝生の庭園には、楽しそうに駆ける小さなお子さんとそれを見守るパパママの笑顔が。建物1階のフリースペースでは、年配の男性がのんびりコーヒーを飲んでくつろぐ姿も。
この施設のいたるところで、性別を問わずさまざまな年齢層の方が穏やかに過ごしているのが印象的でした。

フォーラムでは、女性の起業応援、預かり保育などの育児サポートサービス、DVやハラスメントなどの問題から自分自身を救う窓口など、主に女性の自立をサポートする仕掛けを備えています。
また、誰もが使えるものづくりのスペース(生活工房)や、健やかなからだづくりのためのフィットネスルーム、PC講座などのキャリア支援会場なども備え、性別・年齢問わず自分らしく生きることを叶える教室やワークショップも通年で開催しています。
もしかしたら、この自分らしく前に進む方々が纏うポジティブな空気が、居心地の良い空間づくりを後押ししているのかも。

そしてこのフォーラム内に、私のモヤモヤ・ヒヤヒヤを解消するヒントをくれた場所がありました。

1階の「情報ライブラリ」は、一般的な図書館とは違い、ライフスタイル、仕事(復職・転職・起業など)、育児、介護、家族や夫婦のこと、人間関係、生活の中での困りごとなど…くらしの課題解決やお悩みに役立つ旬な実用書がギュッと蔵書されています。
私が来館した日は、ちょうど今回のイベントと3月の国際女性デーに合わせた特設コーナーがあり、ジェンダー平等や、性、大人の女性の生き方についての実用書や漫画、映像資料などがたくさんありました!

ライブラリ入り口近くには、親子で安全や安心を考えるヒントになる絵本や冊子が。
子ども用の読書スペース。すぐ横にソファもあり、小さな子ども連れでもゆったりと過ごすことができる


同ライブラリ内の絵本コーナーや児童書の棚には、未就学児や小学生の子どもと一緒に読める、からだの仕組みやジェンダー平等などのに関する絵本や漫画も豊富にラインナップ。
今回の取材には、小学校2年生の長男も同行。ゆったりとした空間で母子それぞれ気になる本を手に取り、面白いと思うことや疑問に思う部分を一緒に話し考える、大変貴重な機会を得ました。

「ああ、きっと私がすべきことは“自分を変えること”ではないんだ。本を通して子どもと一緒に楽しみながらジェンダーや性について学び、正しい知識を得ていくこと。それが私たち親子が、モヤモヤ・ヒヤヒヤせずに周りの人との心地よいコミュニケーションを取れるようになることに繋がるんだ。」

この大切な気づきを、情報ライブラリからもらうことができました。

今回の取材を通して導いた、私の答えはこちら。

自分の価値観を全て“変える”のではなく
過去の時代を一生懸命生きてきた今の自分に“プラスする”。
自分自身を大切にすることが、周りの人を大切にすることへ繋がるんだ。

「男女共同参画センター横浜(フォーラム)」は、前向きな気づきをくれる心地よい場所でした。
今の時代の価値観にちょっと疲れちゃった…
そんな時はぜひ、お散歩がてらフォーラムへ遊びに行ってみてくださいね。きっと、自分軸で答えを導き出すための、素敵なきっかけをもらえるはずですよ。

(取材:ココハマ.編集部)


「男女共同参画センター横浜(フォーラム)」
神奈川県横浜市戸塚区上倉田町435-1【JR・横浜市営地下鉄戸塚駅下車 徒歩5分】

◯公式HP
https://www.women.city.yokohama.jp/y/

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